2011年10月16日

若い娘か、年増女か  曳舟

すすき2.jpg
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もう10年ちかくにもなるか?



しびれるようなあの味が忘れられないんだ。

最初に出会ったのも、曳舟の酒場だった。

それまで、酒の肴といへば「さしみ」しか思い浮かばなかった。


子どものころから、父親の晩酌には、よくさしみが載っており、

父親にさしみを口にいれてもらっていた。

そんな事もあり、酒の肴はまずは「さしみ」。

その習慣が、私の中にも当たり前のように染み込んでいたと

思う。

それが、何十年も続く習慣になっていた。


その習慣を、私の横にすわっていた、

酔っぱらいのじいさんが打ち破ってくれた。


私の注文したクジラ刺しが調理場へ通ってなく、肴のないまま

酒を飲むはめになってしまった。


すると、

となりのじいさんが、自分の焼き上がった赤魚粕づけを

「食え、これを食え、肴がくるまでこれを食え」

と押し付けて、一歩も引かないのだ。


はじめは断っていたが、

じいさんの志をむげにするのも気が引けて、 

「いただきます」とありがたく頂戴した


しかし、はじめて食べた赤魚粕づけは、

けっしてうまいとは思えなかった。


じいさんに悪いと思い、必死で食べたのを思い出す。


だが、慣れとは恐ろしいもので、

ゲェーと思いながらも、一週間で3回ほども食べるように…。

あの毒のような強い味にやられたようだ。


さしみは、味が繊細なので最初に食べるのが良いと思う。

好みで途中で食べてもよいが、

前に食べた料理に負けてしまうので、

存在を主張できずかわいそうだ。


赤魚の粕漬けを食べたあとは、粕の味が強く、

しばらくは他の料理を食べても味が負けてしまう。


赤魚粕漬けは、最後に食べるものか?。

それとも、「エェイ 今日はどうにでもなれ!と最初に食べ、

そのあと、ホヤの三杯酢など、濃い品々で攻め抜く」と

いう手もある。


さしみがピッチピチの若い娘さんなら

赤魚の粕漬けは年増女。

新鮮さはかなわないが、若い娘さんにはない味がある。

複雑な味に嫌気がさし、「やっぱり若い娘がいい!

素直が一番!」とよくさしみに戻ったりする。


しかし、素直なだけにも、物足りなさを感じ、

あの舌がしびれるような強い味が忘れられなくて、

気がつくと、メニューから赤魚の粕漬けを探している

自分がいる。



赤魚粕漬けは狡猾な味だと思う。



まねきねこ1.jpg

posted by 川上哲也 at 11:37| 東京 ☁| Comment(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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