2010年12月10日

三つ巴    (南千住)

王子_0047.jpg  

                                        

ひき戸を開けると目の前に、けわしい顔をした中年外国人風の、女が立っていた。


かたくて多すぎる髪を、むりやり強いパーマ液でねじ伏せたような髪型。
やせて勘のつよそうな顔に、濃い化粧、唇からはみでた真っ赤な口紅。
なにかスゴイもの、威圧感さえ感じさせるオバサンが、
「お前はアッチ、コッチやるから注文ワスレンダヨー!マッタクー 、たいした仕事もしないくせにヨー!」
外国人風の女が七十すぎの老婆を口汚くののしっていた。老婆はうつむき、ジッとたえていた。
ひどい店にきたものだ。

不愉快になり店を出ようとすると、「オダヤカニ〜 オダヤカニネ〜 まだはじまったばっかりだヨー」
若い男の声が奥の調理場から聞こえてきた。
コの字型のほそ長いカウンターの廻りには四〜五人ほどの老人がひっそりと座っていた。
メニューを見ると三十品ほどあり、値段も百五十円から五百円くらいまで、横の客が食べていたマグロ刺し(500円)は悪くない。
せっかく来たので一杯だけ飲もうと、マグロ刺しとオニオンスライス(百五十円)を注文。

嵐(外国人風女)が奥へ、店内はトゲトゲした空気が去りやわらかい時間が訪れた。
嵐(外国人風女)さえ来なければこの店は悪くないかもしれない。
ひっそりと飲んでいた老人たちも、子雀のように小声をだしはじめ、私も酎ハイを飲み気持ちがスーと落ちついた。
焼酎もキッコー宮で私の好きな酒だったこともあり、もう少し、と三杯目を注文する頃にはカウンターの席も埋まって、酒場独特の雰囲気が漂いはじめてイイ感じになってきた。

しかしこの店は老人が多い、それも一人客ばっかりだ。
すこし酔いがまわりウットリしていると、調理場で声がする。
料理のことでモメているらしい。
またあの老婆が間違えたのだろうか?。

こんどは店主らしい男(七十代)と、さきほどのオダヤカニ〜の若い男らしい。

料理の手順の事での言い合い、だんだん声が荒くなってきて、いまにも掴みかからんばかりである。
「ヤメナヨー!」あの外国人風女が大声で叫んだ。
言い争いはおさまった、.......と思ったら「¥〜ー=&%$#」(よく聞き取れない)店主が収まらないらしい。
「&%$&&#$$!」と若い男がきりかえした。
「バカヤロー!$¥&#$¥%*+$$!」「コノー糞親父が〜、%#!&W&&%」と外国人風女が一段と大声で興奮。
収拾がつかなくなってしまった。


 調理場で若い板前が怒られたり、言い合う姿は何度か目にした、が、こんなに大声で客を無視した、言い争いは初めてで、外国人風女のボキャブラリーの凄さがいっそう荒々しくみせている。
しばらく言い争っていた外国人風女が「イイヨ、イイヨ、店ナンカ閉メテシマウカラナ!」言ったと思うとな、なんと店の電気を消してしまった。
真暗い店内で私は唖然。


お客のことなど考えてない三つ巴戦はしばらく続いた。 
ほかの客は、と見回すと、老人たちは静かにひっそりと酒を口に運んでいた。
「さすが年長者」と思ったがただ元を取りたいだけのようにも見えた。
私もそばに居た老婆に「酎ハイとシロたれ三本」。
店内が暗いせいもあり落ち着いて観ると、三つ巴戦が演劇を観ているような感覚になった。
 
 二十分ほどの演劇は馴染みの客の登場で閉幕となった。


雨くる_3889.jpg
posted by 川上哲也 at 08:54| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月06日

モツを食う モツを食う モツを食う

              

梅割_1.jpg




 私は決めている。                              
 この店へ行くにはこの時間以外無い、その時間以外は屁だと思っている。     
 ベストな時間は開店10分前。

 10分前に到着、もう5〜6人の人たちが並んでいる。
 一人の客ばかりのせいか、下を向いている人が多く、会話らしきものもない。
 これからはじまるであろうはげしいバトルへの気負いや決意を顔に出している人もいない。
 静かな闘志とでもいうか、慣れているんだね。
 場数を踏んでる人たちなんだね。


 私はこの時間、この開店までの10分間を幸せに感じる。
 2番目になにを食べるか?
 最初はレバ刺し、いつから不動の一番打者になったのか記憶にないが、
 気がついたら最初はレバー刺しにビール。
 問題は二番打者、塩でコブクロかアブラ、今日はアブラあるかな?、
 しかし軟骨も捨てがたい、なんてことを
 想ってウットリしていると、
 開店だ!


この店の 開店時にくる客には共通している事がある。
 それはモツに対する意気込みが半端ではないという事。
 開店前に静かに下を向いて並んでいる時とは違う迫力
 を注文の品物選びやカウンターに陳列してあるモツの部位を見る目つきに感じる。
 それは獲物をみつめる肉食獣の目。
 いやちがう、届きそうで届かない2センチ先に置かれたお菓子をみつめる子供の目。
 しかし食べ方は部活を終えた高校生のようで、シロたれ10本、
 ナンコツ塩5本、コブクロ塩5本、なんてひとりで注文する人もいる。
 その注文の勢いたるや、全盛時のファイテング原田のラツシュに匹敵するかもというぐらいなのだ。
 カウンターを取り巻いた強者たちが一斉に、シロたれ?本、レバたれ?本、
 ナンコツ?本と注文する光景はすさまじい。

 
 この瞬間を、このレバ刺しを、このナンコツ塩を体がほしがっていたんだ〜、
 と顔が訴えているように見える。
 ググゥッーと前のめり、焼きを待つモツを盛った皿がアッというまに10皿、
 15皿とカウンターに並んでゆく。このままだと何時になったら自分の注文した皿になるんだろう。
 早く焼けないかな〜。


 しかし強者は違う。
 注文したモツが焼き上がるまで強者たちは『刺し』を注文。
 レバ刺し塩3本、コブクロ醤油2本とかでしのぐ。
 レバ刺しを食べながらも目は自分が注文した焼きものから離れることはない、
 まだかな〜、早く食べたいな〜という顔つきで待っている。
  
 
 もうこうなると、モツを「食べる」ではなく体がモツをほしがる、一種の中毒患者のようなもの。
 今日もモツ中毒患者たちが静かに下を向いて並んでいる事だろう。

 モツ中毒患者たちはおいしいモツ店に行かないと見られない。





 
 


 

   
 
posted by 川上哲也 at 07:25| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

赤羽、まるます家


赤羽.まるます家

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 うなぎの焼ける煙と、炭に落ちたタレの焦げるにおいがともに鼻をくすぐる。
そういへば近くを東京と埼玉を分ける荒川が流れている。
川魚料理の店が以前は数多く在ったが、今はもう何軒もない。

 お二階へどうぞ。
なんだ二階か、下で飲みたいけど、空いてない?。
『いまは無理です。』中年の女性はキッパリと言った。

 私は一人で飲む時はカウンターでと決めている。それもU字カウンターがうれしい。
大半の店のカウンター席は店の一階にあり、客の入れ代わりも頻繁で、 次々と私の幸せがやってくる。
なぜ幸せか? 知らないお客の顔をツマミながら飲む酒はおいしく感じるから。
ツマミといってもその人の鼻をかじったりするわけではない。
顔を見て勝手に職業や性格などを想像したりするのが好きなんです。


U字カウンターは 相手の顔を見るのにうってつけで 、目線が合っても不自然でなく、
相手との 距離もちょうどよい。ただ以前、想像が妄想をよび、はては大暴走(大妄想)。
滑稽さにこらえきれなくなり、十五分ほどニヤニヤがとまらず、笑いをかみ殺したつもりがブアオ〜なんて変な声まで出し、
回りの客から気色悪がられた事もあった。
(いまでは修行に修行を積み対応できるようになった。素人の方は十分に御注意を)


とくにこの店は客の顔が個性的で、昔風というかバラエティにとんでいる。
顔に力がある人が多く、私の好きな店なんです。
 この店が朝九時から開店している事も私の興味のひとつだ。
私は朝から酒を飲むのはツライ。
午後2時や3時では体が油断している、その隙に酒をむりやり流し込んでいる感じで好きではない。
好きなの は4時 ぐらいからかな、人よりほんのチョット早く飲めることがうれしい。
朝から酒を飲みに来る人達はどんな人達なんだろう?。
たぶん夜勤明けの人たちなんだろうけど、何時でもグイグイと飲めます!、
二十四時間いつでもOK!という東京や埼玉の鉄の胃袋を持った強者たちが集合しているのかもしれない。
なんか怖いような、ワクワクするようなドキドキ感でドアを開けたのを思いだす。


 はじめて上がった二階では にぎやかに結婚式が行われている、と思われた。
4部屋ほどの小部屋の襖が全部取り払われ、ひとつの大部屋になり、大小十卓ほどのお膳を客がにぎやかに取り囲んでいた。
田舎の自宅で行う結婚式のようで、みなさんにこやかに盃を重ねてうれしそうだ。
タタミに足を投げ出している人もいる。
私はまるで海の近くの親しい親戚の家によばれたような錯覚をおぼえた。
そんな気分にさせられたのも、この店に来る客たちのなつかしさを感じさせる個性的な顔だちが一因してると思う。
今日のつまみは、鯉のあらい、鯵の酢づけ、里芋煮、菜の花からしあえ。
        

 此処の二階席はうれしい。



 
posted by 川上哲也 at 03:21| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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